またお会いしましたね

イケメンのおかげで人生楽しい

悪童


とある場所に集った5人の男。どこにでもいる、ごく普通の男たち。だが、彼らにはやらなければならないことがあった。

それがどんなに恐ろしい事であってもー。

5人は幼馴染。みな、悪童だ。


公式サイトより引用



FC入っといて良かったと思った。東京外して申し込んだら名古屋が引っかかったので初ぼっち遠征だった。

以下ネタバレ多分に含む。


登場人物

紺野治/こんちゃん  (森崎博之)

巻光博/まきくん     (安田顕)

吉村雄太郎/チャック  (戸次重幸)

江口幸一/エロっち   (大泉洋)

西崎直樹/西くん      (音尾琢真)


パンフ見てああこういう名前だったのかって思った。劇中ではあだ名しか出てこない。

公式の煽り文を見た段階で結構重い話かなって予想していたけど、まぁそこそこ重くて、でも後味悪い系の話ではないかな。


彼ら5人は中学校の同級生で卓球部の仲間。

舞台は取り壊しが決まっている地元の娯楽施設(ゲームセンターと銭湯とフードコートが一緒になってるやつ)に、チャックが立てこもっているところから始まる。セットは取り壊し間近の田舎の娯楽施設を再現しているので、ごちゃごちゃしていて極彩色。寂れて人気のない田舎の雰囲気が良く出ていたなと思う。

立てこもっているチャックを説得していたのが市役所職員になった西くん。チャックの要求はかつての仲間を全員連れてくること。続々と皆集まってくるけれど、"とん平"がいないと指摘するチャック。とん平とは連絡がつかなかったと言う西くん。市役所らしい水色の上着がめっちゃ似合う琢ちゃん。


子供の頃、いつもこの場所で皆遊んでいたけれど、親に止められて自分だけ来れなかった。卒業したら遊びに来ようと約束したのに誰も来てくれなくて、同窓会の手紙は全部無視されて、こうでもしないと集まってもらえないと思ったと言うチャック。

付き合っていられないと帰ろうとするけれど、チャックが何かの病気にかかっていることを知り、付き合うことにする。


ここで皆でエアボウリングするのがかわいい。最初はとても嫌な顔をしていたのに最後は一番真剣にやってる巻くんと、ストライク出してキャッキャはしゃぐ西くん紺ちゃんエロっちと、その輪に入れてもらえなくて拗ね出すチャック。学生時代の関係性が見えたし、NACSの関係性を見ているみたいで微笑ましい。あとエア卓球もやるのだけど、演出がマギーさんなのでプロジェクションマッピングとかたくさん使って出演者の紹介をここでする。スタイリッシュ。


最初は楽しくはしゃいでいたけど、当時の思い出を語っている内に嫌われ者の先生、「鴨田」のことを思い出す。

生徒に体罰を加えていたこと、エロっちは殴られて鼓膜が敗れたこと、"とん平"をいじめていて、それが原因で彼は自殺を図ったこと。


建物を包囲している警察官の中に鴨田そっくりの警察官を見つけて、「あいつ鴨田じゃねぇか?」「チャックの望みを叶えてやったんだから、今度は俺に付き合ってくれ。鴨田殺そうぜ」と言う巻くん。


それに便乗したエロっちが袋を集めてぐるぐる巻にした等身大の大きさのものを持ってきて、巻くんと二人で鉄パイプで叩きまくる。

ここでちょっとドキッとしたのは、これが「演劇上人に見立てたもの」なのか、「舞台中でエロっちが作った鴨田(仮)」なのか分からなかったところかな。

「エア殺人なんて不謹慎か?」って巻くんのセリフがなかったら多分ドキドキしたままだったと思う。


・本当に病気(ガンだったかな)にかかってたのは西くん。親に止められて皆と遊べなかったのも、卒業後また遊ぼうねって約束をしたのも西くん。チャックは何も言わない西くんの代わりに皆を集めて思い出を作ろうとした。


・とん平が自殺を図った原因は鴨田ではなく自分達の誰かにある、という紺ちゃん。病室で「卓球部の誰かが原因か?」という問に何も答えなかったとん平。


・チャックの教科書にパラパラ漫画を描いてお金を取っていたのはエロっち。

ゴミクズと呼んで足の悪いとん平にうさぎ飛びや無茶な練習をさせたのは巻くん。

上履きを隠して色んなところにメモを残して探しさせて、いつも遅刻させていたのはエロっち。

優しくするのが面倒になって無視していたのは紺ちゃん

それを全部分かっていて、卓球部辞めてもいいよと言えなかったのは自分。


・とん平を一度だけ見かけたことがある。足を引きずって、新宿でホームレスをしていた。彼をそういう風にしたのは自分達で、自殺に追い込んだのは自分達。


・結婚はうまくいかなくて、会社もあまり上手くいっていない巻くん。

もう何年も絵なんて描けなくて、女のヒモやりながらなんとか生きてるエロっち。

毎日普通で平凡で幸せなはずなのに、時々自分が誰なのかわからなくなって逃げ出してしまいたくなる紺ちゃん。 

紺ちゃんの良かったなと思うのは、普通の平凡で幸せな家庭っていうのがリーダーにとっても合っていたこと。それが果てしなく続くことに、疲れてしまって遠くに行きたくなるって、きっと誰にでもあると思う。

会社経営してる巻くんや画家で自由に生きてるエロっちより贅沢な悩みかもしれないけど、きっと誰にでもある悩みは紺ちゃんのそれだった。



・死にたいとかそんな贅沢言わないで欲しい、とチャック。


・皆一発ずつ殴りあっておあいこ。自分達がとん平にしたことを忘れないでくれと言う西くん。


・立ち去ろうとした時、思い出すエロっち。


・教科書に落書きしてくれと頼んできたのはとん平で、お金を払い出したのもとん平自身。彼が飛び降りた屋上からは、女子更衣室が見えて、いつも二人で覗きをしていたこと。足が悪い彼はいつもエロっちに支えられて覗きをしていたけれど、その時期はエロっちがずっと学校をサボっていて、我慢ならなくなった彼がひとりで覗きをしようとして身を乗り出したところを巻くんが目撃。

それに動揺してバランスを崩して落ちたのであろうこと。


遺書のように残されていた手紙は、ある場所を指し示すメッセージだったこと。


・そのメッセージの場所が今正に自分達のいる場所だと気付いて捜索を始めると、ひとりひとりに宛てた手紙が見つかる。


・父親のように厳しく優しくしてくれた紺ちゃんに感謝していること、渾名をつけてくれた巻くんに感謝していること、エロっちの落書きをいつも楽しみにしていたこと、チャックにおもち食べ過ぎないでね!、卓球部に誘ってくれてありがとう西くん。


・最後に巻くんが携帯のニュースでとん平がブロードウェイで大成功して今度日本に帰ってくること、ホームレス役をやるにあたって新宿でホームレスになりきっていたことを読み上げて5人で笑い合う。



お話としては綺麗にまとまっていて良かったと思うし、役が本当に各々ハマっていたのが何より楽しめた。

ピンクのTシャツ衣装のシゲさん、早い段階で汗かきすぎて首周りが変色。

気になったというかもやもやしたのは終わり方かな。最初に書いた通り後味が悪いわけじゃないけど、「本人がいじめられたと思ってないからいじめじゃない」感が残ったというか、とん平の受取り方がどうだったにせよ西くんに指摘されて項垂れるくらいには自分達が悪いことをしているとかそういう自覚があったんじゃないかなって。

でも本人が気にしてないからまぁいっか、なの?って思ってしまった。

なのでそこはもうちょっとクリアにして欲しかったなぁと思う。

鴨田殺そうぜって言い出す巻くんのほの暗さというか狂気というか、そういうのものは肌で感じて安田さん流石でした。

あと全部見終わって煽り見るとあんまり皆普通じゃないぞ?!ってなる。画家と会社経営者がいる時点ですでに。

彼らのやらなければいけなかったことは、多分過去と向き合うこと。見たいものだけいいように解釈して現状を嘆くばかりで何もしなかった彼らが、蓋をしてなかったことにしていた過去とちゃんと対峙して自分の中に取り込むことでこれからを見つめ直す。

その後を想像するのがすごく楽しい舞台でよかったな。


あと本編アフタートークもメモっておこうと思ったけどどれが名古屋の話でどれがライビュの話か覚えてないので割愛。


そういえば舞台のライビュを初めて見た。

自分の見逃したところが見直せるのは勿論いいんだけど、逆にもう一回見たかった! ってところが写ってなくて焦れったい。